移行係数ってなぁに?
どの数値を見ればいいの?
放射能と食物に関するいろいろな疑問を
あなたにかわって
放射能にくわしい人に質問します!

稲葉 次郎(独立行政法人放射線医学総合研究所名誉研究員)

昭和38年東京農工大学農学部卒。放射線医学総合研究所において、36年にわたり内部被ばく放射線安全研究に従事。その後、財団法人環境科学技術研究所で環境安全研究に従事。
この間,米国コーネル大学、国際原子力機関に出向。国際放射線防護委員会の第2専門委員を務めた。

放射能は、環境中に出る時は大気中に出ます。それが風に乗ってあるいは雨とともに降下してきて、農作物に触れます。それを直接汚染といいます。さらに降下したものが地面に降下して、それが根を通して植物に入ることがあり、そういう汚染の仕方を間接汚染とか経根吸収といいます。

定時降下物は少なくなってきているという現状を考えると、いま注目するのはどちらかというと間接汚染のほうですね。

そうです。

そうすると、定時降下物に触れていない、ビニールハウスみたいな所は、そもそも安全という感じで考えていいんですよね?

まぁ、ハウスの気密性によると思いますが、安全の度合いは、露地の栽培より大きいことは確かですね。

土壌中の放射能は経根吸収で植物体の方に少しずつ移行していくんですね。その移行の度合いを示すものが、移行係数です。これについては実測値が多数あるんですが、セシウムの玄米への移行の場合、その中で大きく見積もって0.1という数値が使われています。そうなると、例えば1キロあたり5000ベクレルのところの土壌で栽培したお米には、玄米の数値として1キロあたり500ベクレルになると考えられる、ということになります。

では、その500ベクレルの食物を食べるとどうなるでしょうか。

農作物あるいは食品の摂取制限値として、穀物はセシウムに関して1キロ当たり500ベクレルです。一般的には、規制値のものをそのまま食べ続けることは殆ど不可能であると思いますが、これを1年間ずっと食べ続けると、お米だけからは1ミリシーベルトの線量になるということになります。

それだけを1年間食べ続けた場合という意味ですね。

そうです。実際には500ベクレルのものを食べ続けるのは、一般生活の上で現実的には考えられないと思います。

土の中の放射能の濃度に対する食品中の濃度の比であって、米の場合が0.1ということになります。より正確にいうと玄米の数値です。但し、実際に可食部になると、もっと小さくなります。また、農作物、野菜等は、一般的 に移行係数がもっと小さくて、0.01ぐらいのレベルのものが比較的多いかと思います。

農林水産省が平成23 年4 月8 日に発表した「稲の作付に関する考え方」では、5000Bq/kg を超える放射性セシウムを含む土壌において、稲の作付を制限しています。見せます!いわきでは、この稲の作付け制限をもとに土壌の測定値を評価していますが、野菜のほうが米より移行係数が小さいということは、野菜に関しては、米より安全側になるという理解でよろしいでしょうか。

そうです。

セシウムは、134も137も体の中での挙動は同じです。全身に均等に分布するので、何か特定の臓器の線量が高くなるということはありません。ヨウ素は甲状腺ガンのリスクが高まると言われているように、甲状腺に集まる性質があります。但しヨウ素の半減期は早いので、今後はセシウムに着目する必要があるでしょう。

大量に食べた場合、どのようなリスクがありますか?

確かに、大量に食べれば、放射線によるガンの確率が高くなります。たとえばお米など穀類であれば1キロあたりセシウム500ベクレルという規制値ですが、穀類以外のすべての食品も規制値の濃度となり、そのような食品を1年間食べ続けて5ミリシーベルトになるということです。すべての食品が規制値になるということ自身現実には考えにくいことですが、その20倍、100ミリシーベルトになる量の放射性物質を摂ると、統計的に有意なリスクが出てくるでしょう。

そうです。年齢別に計算をして、それでいちばん厳しい年齢群の数値を使って算出されています。

気になる場合は、そうした除染の方法を採用されるとよいと思いますし、紹介されている方法は間違っていないと思います。例えば、洗うことで表面の放射性物質を除き、野菜等を茹でてその茹で汁を捨てることで土壌から根を介して吸収された放射性物質を少なくすることができます。

なるほど。食物とは違いますが、家庭菜園の除染に関しては、「土地の表面を1cmほど除去しましょう」というようなアドバイスを良く耳にします。これには合理性はありますか?

あります。セシウムは、土壌にくっつきやすい性質があります。しかもくっつくとそんな簡単には離れない。だから、土壌の表面を除去することは効果的なのです。

土壌を混ぜたりしたら表面だけじゃすまないですよね。

そうです。未攪乱で、要するに耕作してなければ、3月から何にもしていないような土地なら、比較的薄い層を除去することで大きな効果を得ることができるわけです。


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